本屋で働くと

以前、本屋で働いていました。このブログでも、その体験をもじった、極々みじかい話を書きました。今回、また本屋の話をしようと思います。

 

本屋の仕事は、見た目より、かなりハードです。

ツンと澄ましてカウンターの中に立っている。書店員に対して、このようなイメージを持っている人は結構いるのではないでしょうか。少なくとも僕はそう思っていました。

 

しかし、実態はずっと肉体労働がメインです。特に男性は。

また、小売業の中ではかなり覚えることが多い方の仕事です。

 

もっと大変な仕事は世の中にたくさんあるでしょう。

ただ、大変な仕事の中に、地味に書店員が入っているのは間違い無いと思います。

 

いけない、いけない。

今回はそんな話をしたいがために書いているのではありませんでした。

 

書店員だった頃の一番よく思い出すことは、朝の商品の搬入作業です。

僕の働いていた本屋は10時開店なのですが、7時ちょっと過ぎには着いていないといけませんでした。なんせカゴ車に2台、満載の本を1階から10階以上へ上げなければなりません。そしてそれらを一冊ずつ伝票と突き合わせ、首尾よく棚にならべていかなくてはならないので、毎朝、冬でも半袖で汗みずくになっていました。

 

僕が言いたいのは、どれだけ僕が苦労したかということではなく、その時に見ていた風景が、割と気が利いていたなと思うからです。

 

商品の開梱をしていると、毎朝決まって同じ時間に掃除のおっちゃんに会います。

初めはお互い挨拶をしていましたが、数か月経つと、目線を合わせるだけになりました。

「おい若いの、今日も大変そうだな」

「あんたもな、おっちゃん」

みたいな、無言のやり取りがありました。

 

そして何より僕がよく覚えているのは、朝の搬入作業が終わった後、トイレでTシャツからワイシャツに着替えている時に、窓から眺める景色でした。隣のビルの建設工事が行われていて、ヘルメットを被った作業員の男たちがせっせと仕事をしている光景が、とても清々しく感じられました。

その後、街を歩いていれば、そういう建設工事の場面に出くわすことは多々ありましたが、あまり印象に残っていません。きっと、僕が書店員だった事が、その頃見た風景を印象深くさせたのだろうと思います。本屋で働くと、そういう事が起こるのです。