家から自転車で10分くらいのところに川が流れています。割と大きな川で、河原も広く、夏になるとそこでバーベキューをする人が多くいます。僕はインドア派ですので、バーベキューなどは人生で一度きりしかしたことはありませんし、焼けた肉を網から取ろうとすれば隣の人に先に取られてしまい、満足に食べられなかった記憶しかありません。途中で食べるのを諦めて、川に近づいて、目の前を流れる川の様子を眺めてばかりいました。

 

目の前をどんどん流れる川の流れ方は常に一定ではなく、うねるように流れます。遠くからは川面がきらきらとしていましたが、近づくと深い緑色をしていて、少し苔の匂いもするのです。荒々しさを感じます。毎年この川では事故が起きて、子供や大人までもが溺れて亡くなるので、僕は川には入りません。ただ眺めるだけです。

 

冬の川を見るときは、橋の上から見ます。図書館に行くついでに、です。ついでのつもりが、自転車から降りて、自転車を引きながら川を眺めます。夏の川を見るときは、堤防に腰かけて、ラムネを飲みながら眺めます。

 

川の流れを人生にたとえる人はたくさんいますが、僕は川の流れ自体が心の在り様だと、いつも思います。遠くから見るときらきらと美しいものでも、近づけばずんずんと荒々しかったり、次から次へと移り変わっていく、人のこころに似ていると思うからです。こころの機能というのが、本来、どんなものでも固定させず、移ろわせるものであるからこそ、人は固定したものや絶対的なものを欲するのかもしれないな、と思う時があります。そう考えながら川を眺めるのが僕は好きです。